| 99 仕事 |
日本に戻ってから俺は車の製品工場で 働く事になった。
正社員じゃなく契約社員だったから 安定もしてないしボーナスも安かったけど 給料はそこそこに貰えた。
毎月銀行からフィリピンへお金を送り たまにケーシーと電話で話した。
電話にはお母さんやアイリーンも出る事も多く 彼女達の声を聞くと癒された。
たまにケンと居酒屋へ行ったり そのままジェニファーの店に行ったりしたが 誰かに興味を持つと言う事はなかった。
たくさんのフィリピーナがアプローチもしてきたけど
「俺には好きな女が居るから」
と断り指名もせずジェニファーとケンと3人で会話をしていた。
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| 98家族 |
その後家へ行き お母さん・アイリーンと久々の再会。
思ってたよりアイリーンは元気で 俺の持ってきたシーフードヌードルを美味しそうに食べた。
お母さんは
「あの時はありがとう」
と涙し ケーシーから援助の話を聞くと目を大きくし
「そこまでしてもらえない」
と言った。
俺は全く他のフィリピン家庭を知らないので 比べ様はないが クリスティーナと付き合ってた時にあまり
「頼る」
と言う事をしない珍しいタイプだと思ってたし その性格と言うのは両親譲りだったのではないかと思う。
さっきケーシーに言った言葉と
「俺は日本に母親が居るけど
ママの事はフィリピンのお母さんだと思ってるし
ケーシーも俺の妹だと思ってるし
アイリーンは俺の子供だと思ってますから」
と言った。
そして
「あまりフィリピンにも来れないと思うし
精神的な支えにはなれないと思うけど
生活って意味ではクリスティーナがしてた事を引き継ぎたいんです」
とお願いをした。
お母さんはその言葉に再度涙し ケーシーも泣いた。
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| 97会話は難しい |
クリスティーナが亡くなってから半年が経ち 俺はまたフィリピンに居た。
以前まではクリスティーナが居たから不便もなかったが 今回は日本語を喋れる人が居ないので 色々と大変。
何故俺がまたフィリピンを訪れたか。
それはクリスティーナが心配してたアイリーンに対し 援助をする意思を伝える為。
俺は
「アイリーンの事は心配するな」
とクリスティーナに言った。
精神的な支えにはなれないだろう。 しかしお父さんも亡くなり大黒柱のクリスティーナも亡くなった彼女の家は きっと生活も大変で せめてそこの不安だけは取り除いてあげたかったのだ。
お兄さんは一応仕事をしてるが安月給で 奥さんも子供も居て奥さんの家に住んでいる。
妹のケーシーはまだ大学生で お母さんも仕事はしてない。
空港へはお兄さんとケーシーが 迎えにきてくれていた。
軽くハグをし とりあえず家へ行く前にコーヒーショップで話をしようと誘った。
ケーシーは英語が堪能だったので英語で
「今生活はどうなってるの?」
と聞いた。
「お姉さんが残してくれたお金で生活してます
私は今大学休んでアルバイトしてる
お兄さんは家族あるからそっちで暮らしてる」
と言うケーシーに
「そっか
大体今は一ヶ月幾ら位で暮らしてるの?
クリスティーナが生きてる頃は幾ら位で生活してたの?」
と聞いた。
「今は一ヶ月8000ペソ(この当時で15000円位)
前は私の大学もあったしお兄さんも居たから15000ペソ(30000円)位です」
「そっか
これからはケーシーがお母さんの為にも頑張らなきゃいけないでしょ?
でも大学出ないとあまり良い仕事見つからないでしょ?」
と言った。
「はい 私頑張ります
家族は大事だから私の出来る事は全部やります」
と言うケーシーに
「ケーシーはこれからまた大学に行って。
ケーシーが大学を出て仕事をする様になるまでは
俺が助けるから
一ヶ月30000円送る
もしアイリーンの学校とか問題が出たら
それは俺に言ってくれればいいから
とりあえずバイトは辞めて勉強を頑張って」
と言った。
何度も断るケーシーに
「俺はクリスティーナに頼まれてたし
もし俺がクリスティーナと結婚してたら家族だったんだから
俺は今でもクリスティーナを愛してるし
もう誰も愛さないと思う
だから結婚してるのと一緒なんだ」
と言い納得してもらった。
ケーシーは泣きながら俺に感謝の言葉を言った。
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| 96 新しい未来へ |
ジェニファーとケンと3人で居酒屋へ行った。
二人は
「凄く心配してた!」
と、とても俺の事を心配してくれていた。
「フィリピンではありがとうね
ほんとはもっと早くお礼も言わなきゃいけなかったんだけど
まさかね・・・・
でももう大丈夫だから ありがとう」
と言うと
「ありがとうなんて要らないよ
俺達友達だろ?」
とケンが言ってくれジェニファーも
「友達でしょ?」
と笑顔で言ってくれた。
「ほんとにありがとう」
二人の優しさがとても嬉しかった。
その後久しぶりにフィリピンパブへ行き 久しぶりに酒を飲んだ。
クリスティーナの事を知ってるフィリピーナも多く 泣いてくれる子も居た。
やはり異国での仕事って事で 時には喧嘩もするだろうけど彼女達は同志だと思う。
共に笑い共に泣き共に悩み そんなクリスティーナの同志がここにはたくさん居た。
帰り道ジェニファーに
「色々やらなきゃいけない事もあるから
しばらくは来れないけどケンと幸せにね」
と言うと
「あなたと私 お店関係ないでしょ?
お店来ないでも会えるでしょ?」
と言ってくれた。
「ありがとう」
そう言いクリスティーナとの想い出がたくさんつまったフィリピンパブを後にした。
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| 95 あの場所へ |
ある日突然
「新潟に行きたい」
と思いあの旅館に電話した。
「一人なんですけど」
と告げると少し躊躇されたが それでも泊まらせてくれる事になった。
「電車の中ではこんな事を話したよね」
「駅を降りてここを散歩したよね」
などとクリスティーナに頭の中で語りかける様に旅館へと向かった。
旅館に着くと遠藤さんが居て 俺はクリスティーナの事を話した。
それを話すと遠藤さんは泣いてくれた。
異国でクリスティーナの為に泣いてくれる人が居る。 俺は誇らしい気持ちになった。 彼女はフィリピンパブに限らず 色んな場所で人を笑顔にさせてきた。 そんな彼女がとても誇らしかった。
死んだ彼女の分まで俺は生きなきゃ そう思えた。
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| 94 夢 |
体も精神も限界に近づいていた。
鏡で自分の顔を見ると痩せこけ 目にはクマが出来ていて病人の様だった。 まるで最後のクリスティーナの様だった・・・
俺の前に突然クリスティーナが現れ
「何やってるの???
ちゃんとご飯食べなさいよ〜
痩せるとパンゲッ(ブサイク)だよ!
私ご飯作るからたくさん食べなさい!」
俺は彼女の料理を食べた。
「戻ってきてくれたの?」
「当たり前でしょ?
だってあなた一人だと心配だもん
ほんとあなた私のベイビーみたいな へへへ
ずっとあなたの傍いるよ」
「クリスティーナ・・・・」
熱い・・・
意識が戻った。
たくさんの汗を掻いていた。 気を失ったのか寝たのかよくわからない。
その後俺は久々にコンビニへ行き 今まで食べてなかった分もたくさん食べた。
あの夢が夢と思えず 俺の胸の中にクリスティーナが居る気がした。
「あなたちゃんと食べたね 美味しい?」
とクリスティーナが笑ってる気がした。
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| 93 今後 |
日本へ帰ってきてまず会社を辞めた。 と、言うより1週間の休みを取り 実際はそれが4ヶ月以上の休みになった訳で 当然連絡もとってなかったから解雇の様な感じだった。
「今まで真面目に働いてたのになんで突然こんな事をしたんだ?」
と上司に問い詰められたが 説明する気力もなかった。
とりあえず貯金もあったし僅かながら退職金も出たから 俺は何もしなかった・・・と言うより何も出来なかった。
フィリピンに居る時は俺より彼女の家族の方が悲しいんだろうと思い 何かと気を使ったり気持ちが張っていた。
だから自分でも驚く位冷静に過ごせた気がするけど きっとこれは麻酔をしている様な状態で 日本へ戻ってきた事によってその麻酔が切れた様だった。
ケンからは何度も電話をもらったが 人と話す気持ちにはなれなかったので電源を切った。
毎日アパートでボーッとしながら クリスティーナの事を考えた。
このアパートには彼女の物もたくさんあったし 何より彼女との思い出がたくさんあった。
それを見たり思い出す度に俺は泣いた。
涙は枯れる事は無く延々と泣いていたし 食事も喉が通らなく寝てもすぐ起きてしまう日々。 俺は参っていた。
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| 92 死 |
彼女の命はもうそう長くない・・・
俺はケンとジェニファーには帰ってもらい 時間が許す限り彼女の傍に居た。
彼女は実際には分からないが 俺の前では死ぬ事に対しての恐怖は出さなかった。
しかし事あるごとにアイリーンの将来は心配してたから
「心配する事はないよ
俺が助け続けるから」
と声をかけていた。
俺と居る時クリスティーナはいつも笑顔だったから 俺も彼女の前では笑顔を見せたが 部屋から出ると涙が止まらなかった。
なんで彼女の様に家族の為に自分を犠牲に頑張ってきた子が 死ななければいけないのか。 彼女が信仰する神を恨んだ。
「ベイビー また私日本行きたいな
また二人で一緒に暮らしたいよ」
と言っていた彼女だが 段々と衰弱していき最後の方は
「ねぇ ベイビー
私もう日本行けないね
一緒に暮らす出来ないね
でも私ずっとあなたの事見てるよ」
などと言っていた。
「そんな事言うなよ また行けるよ」
と言う俺を見て
「ねぇ ベイビー 笑って
私あなたの寂しい顔見たくない
だから笑って」
と弱々しい笑顔を見せた。
結局彼女は俺がフィリピンに来てから 4ヶ月ほど経った時に亡くなった。
これが作りもののドラマや小説なら 奇跡が起きたりするんだろうけど現実は惨い。
夜中いきなり体調が急変し 俺の呼びかけにもアイリーンの呼びかけにも お母さんの呼びかけにも反応しないまま彼女は死んだ。
「ねぇ ベイビー
あなたほんとフィリピンきてくれてよかった
私は幸せ
でもあなたきっと凄く辛くなる それが心配だよ
また好きな人見つけてね
あなたは凄いいい男だからすぐ新しい恋人出来る」
亡くなる数日前に彼女が言ったセリフ。
「何言ってるんだよ
俺はお前しか愛せないよ 一生お前しか愛せない
だからそんな事言うなよ」
と言う俺に
「私たいしと恋人になれてほんとに幸せ
あなたに愛してもらって幸せ
私もあなた愛せて幸せ」
と満ち足りた表情で言っていた。
もしその言葉がほんとなら俺は良かったと思う。 俺はこれまでたくさんの幸せを彼女からもらってきた。 だけど俺はどれだけ彼女に幸せを与えられたのだろう? と考えると正直自信がない。
でももし俺がフィリピンを訪れた事で 少しでも彼女が救われたなら・・・
ここの部分は書けない。 俺はこの時過ごしたクリスティーナとの日々だけは 自分の中だけに閉まっておきたいし どんな表現をしたら良いのかもわからない。
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| 91 なんできたの・・・ |
「クリスティーナ」
と呼んでも彼女は何も答えない。
彼女はただ必死に泣くのを堪えながら しかし実際は堪え切れてなかった。
そんな彼女を布団の上から強く抱きしめると 彼女は嗚咽を溢し始めた。。。
「なんできたの・・・」
と言う彼女に
「やっぱり俺はクリスティーナを愛してるから
電話で言われた事も信じられなかったんだ」
と返した。
「嘘言ってごめんなさい
でも嘘言った方がいいと思ったの
私の病気治らないって聞いたんでしょ?
だからね もう私は何も出来ない」
と涙する彼女。
そんな彼女を抱きしめ
「そんな事ない
愛してる人が辛い時傍に居たいんだよ」
と言った。
彼女は痩せ細ったその手で 懸命に俺を抱きついてきた。
そして
「ほんとに今まで辛かったの
病気になった事よりあなたに嘘を言う事
ごめんなさい」
と涙した。
その後 彼女は胃がんで既に末期と言う事がわかった。
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| 90なんで |
「あのね クリスティーナ今病院にいる
ずっと病院」
「えっ??」
「治らない病気だって・・・」
訳が分からなかった。
しかし反面で
「だからクリスティーナはこんな嘘をついたんだ」
と思った。
「病院の場所聞いた?」
頷くジェニファーとケンと共に俺は病院へと向かった。
「治らない病気?」
俺の頭の中は真っ白だった。
真っ白なまま病室を訪れると そこには前より痩せたクリスティーナが居た。
俺の姿を見て凍りつくクリスティーナ。 そして彼女はタガログ語で
「出て行って!」
と叫んだ。
俺は二人に
「二人きりにさせて」
と言いベットに包まるクリスティーナを見た。
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